偏差値だけでなく「真水倍率」も受験校選びの参考に 【中学受験】

森上教育研究所では、実合格率の分子である実受験者数から水増合格者分を差し引いた受験者数を実合格者数で割った「真水倍率」が受験校選びの参考になると考えています。「真水倍率」とは、実際に手続して入学する受験生だけの正味の倍率という意味です。どのように活用すればよいのか、具体的にご紹介します。

「真水倍率」を活用して合格可能性を考える

どの学校を受験するのかを決める際は、どのご家庭も合格可能性を考えて学校選びをするかと思います。入試は有名校になればなるほど1回限りです。しかも同じ日に別の学校も入試があるのですから、可能性のない学校の入試を受験すること自体はよいとしても、そのために別の中学校に進学する機会を損なうのは得策とは言えません。同じ学校を2度受けられる場合、もう一度チャンスがありますが、2度目は多くの場合、1度目より難化しています。

そこで、どの学校を受ければより合格可能性が高いかを考える場合、通常は模試を受けて偏差値を出し、学校ごとの合格可能性を判定することになります。多くの模試では80%の可能性か50%の可能性か、合格可能性をかなり高い精度(ただし6年生の後半)で出してくれます。
従って偏差値自体を使わない手はないのですが、その学校の合格可能性80%の偏差値の学力があったとして、それだけの学力があれば8割の人は合格しているということですから、実は多くの受験生は更に上を目指し、「それならもうワンランク上の学校にも挑戦しよう」と考え、その際は50%の可能性の学校も受けようとします。半分は不合格になりますから、かなりリスクの高い挑戦といえます。

合格可能性を考える方法は、実はもう一つあります。それは単純明快で、受験の倍率で合格可能性の高いほうを受験するという方法です。
今回は、「真水倍率」という考え方を用いて考えてみます。真水倍率とは、実際に手続きして入学する受験生だけの正味の倍率という意味です。実合格率の分子である実受験者数から水増合格者分を差し引いた受験者数を実合格者数で割ると、真水合格率がわかります。

男子校の直近2年の入試状況表を参考に説明したいと思います。

(出典:森上教育研究所)

たとえば、A君の模試偏差値が50くらいだとします。そして挑戦として偏差値55くらい(55が80%合格ライン)の攻玉社か桐朋(実際にはかなり違う校風ですのであくまで考え方として提示しています)を受けるとすると、2018年入試で見ると出願時の倍率(応募倍率)は攻玉社4.17、桐朋3.65で一見攻玉社が難しそうです。
結論から言えば真水倍率は、攻玉社は0.99、桐朋は2.0ということになります。桐朋は2倍ですから合格する可能性は5分5分、攻玉社は(あくまで計算上ですが)1倍を割って全入だったことがわかります。
もっともこれは入試後にわかる結果であり、実際の入試の前にわかるわけではありません。ただ、水増率の傾向はあまり変わりませんから、応募倍率の段階である程度推測することが可能です。ただ桐朋にしても倍率で5分5分の可能性なのですから、十分合格も考えられ、挑戦する意味はあるでしょう。

女子校の場合は、もっとわかりやすくなります。

(出典:森上教育研究所)

女子の場合は、たとえ実倍率が2倍台でも真水倍率が1倍台のところがいくつも見られます。たとえば吉祥女子の実倍率は2.22ですが真水倍率は1.06、鷗友の実倍率は2.03ですが真水倍率は1.75となっています。桜蔭は応募倍率が2.27ですが真水倍率は1.67、フェリス女学院も応募倍率は2.21ですが真水倍率は1.88となります。言うまでもなく2倍を切れば合格可能性のほうが高まるわけです。第1志望校の倍率が1倍台なら受けやすい印象となりますが、併願校として滑り止めを考える場合にもこの「真水倍率」は一つの考え方として有効といえるでしょう。また、リスクの取り方として比較する際にも、よい指標になるように思います。

最後に、共学校の直近2年の倍率状況は以下の通りです。

(出典:森上教育研究所)

(出典:森上教育研究所)

共学校は男女とも実倍率3倍台が多く、男子校や女子校に比べて倍率局面では極めてリスクが高くなります。従って共学校受験こそ偏差値にモノを言わせるところですが、それでも完全ではありません。少しでも真水倍率が低くなるところを受験校に選ぶという視点をもつことも有効ではないかと思います。

これから中学受験を迎えるご家庭は、応募者数や実倍率を前に気後れを感じることなく、「真水倍率は一体いくつなのか?」という考えを頭の片隅に入れながら受験校選びができるとよいですね。また、この「真水倍率」の考え方は、大勢の受験者を目の前にした入試本番でも、「こんなにライバルはいるけれど、倍率は1倍台。自分のできることをしっかりやれば大丈夫だ」と、フラットな気持ちを作ることにも一役買うはずです。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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