半導体メモリの価格暴落に端を発した半導体不況は、ファウンドリ企業にも影響を及ぼし、トップシェアのTSMCの2019年第1四半期売上高は、前年同期比18%減とTrendForceが予想していたが、台湾の複数メディアが「TSMCは、2019年第1四半期を底に、3月末から受注が徐々に増え始めているため、第2四半期から下期にかけて業績は回復して行く見込みである」との観測を相次いで報じている。

台湾の日刊紙「工商時報」電子版は3月26日付けでこのような観測を伝え、「スマートフォン(スマホ)の次世代機種向けプロセッサチップ調達が始まり、中でも華為技術(Huawei)による自社プロセッサチップ(Kirin)の採用機種拡大や、Appleの次世代プロセッサ(A13)の生産が貢献することから、TSMCの下半期業績には期待が持てそうである」と述べているほか、「QualcommやMediaTekなどのスマホ向けプロセッサ、 AMDやNVIDIAなどのCPU/GPUチップの製造は第3四半期にピークを迎える見込みで、TSMCの売上高は大きく伸びる見込みである」との見方を伝えている。

これを裏付けるかのようにTSMCは2019年第2四半期のウェハ投入枚数が前四半期比で10%以上増える見込みだとしている。同社の第1四半期のウェハ投入枚数が低調だった理由として、工商時報は、iPhone向けプロセッサ需要の減少や、TSMCのフォトレジスト品質不良によるウェハ廃棄問題により一部の出荷が第2四半期に先送りになったことを挙げている。

7nmラインの稼働率が上昇 - EUV適用も開始か?

また、台Digitimesも4月3日付けで、「TSMCの7nmチップの受注が増加し始めており、第1四半期に落ち込んでいた7nmプロセスの生産ラインの稼働率が上昇を始めたようだ」と伝えている。現在、受注が増加しているのは、Android系スマホ用プロセッサだという。

TSMCは、AppleやQualcomm、MediaTekなどの携帯電話のチップベンダがハイエンドなチップに対する注文のペースを加速させているため、2019年第3四半期には7nmの製造ラインがフル稼働するとの見方を情報筋は示しており、その動きは今後増していく可能性もある。

また、TSMCは2019年第2四半期よりEUVリソグラフィを量産ラインに導入すると見られていたが、Digitimesでは「TSMCはEUVリソグラフィを利用した7nmプロセス(第2世代7nmプロセス「N7+」)を用いた半導体チップの生産をすでに3月末に開始した」との業界関係者の話を伝えている。ただし、本格的な量産・出荷は、2019年後半からとのことである。なお、2019年にASMLが出荷する予定の30台のEUVリソグラフィのうち18台がTSMC向けだという。

年内には5nmのリスク生産も開始予定

TSMCの劉徳音(マーク・リュウ)董事長は3月、「世界経済の減速や米中貿易戦争など不確定要素が多いが、半導体市場は第2四半期に好転し、景気は急速に回復する」との見解を明らかにしており、ここにきて台湾の複数のメディアが、その発言の通りになりそうだと伝えている。

こうした動きもありTSMCでは、7nmからさらに微細化を進めた5nmプロセス(N5)を用いたデバイスについても、「2019年後半にリスク生産を始める」と公表しており、テープアウトについては2019年の前半、量産体制移行については2020年前半を予定ともしている。

AMDの業績も2019年後半には回復の見込み

なお、Digitimesは4月3日付けの別の記事で、PCメーカー各社の情報として、AMDから、ノートブック、マザーボード、サーバ向けの新たなCPUとGPUが年央に出そろうので、同社の2019年後半の売上高が伸びる見込みであるとの観測を伝えている。具体的には、新しいZen 2アーキテクチャを搭載したAMDの第3世代RyzenシリーズCPUと、対応するX570チップセット、および「Rome」と呼ばれる(開発コード名)のサーバ用CPUである。同社の次世代NaviシリーズGPUも、第3四半期に発表される予定で、これらはすべてTSMCに製造委託し、最先端の7nmプロセスを採用しているとしている。情報筋によると、現在のTSMCの稼働率向上は、おもにHuaweiとAMDからの受注に支えされているという。